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「そういう盛り上げ方をしても面白い」 なでしこ猶本光が提言するWEリーグ改革案
【インタビュー】WEリーグ再開へ「細かいところを突き詰めて、つなげていきたい」
冬季中断期に入っていたWEリーグが、いよいよ3月5日に再開する。現在、INAC神戸レオネッサが首位を走り、勝ち点9差でマイナビ仙台レディース、三菱重工浦和レッズレディース、ジェフユナイテッド市原・千葉レディース(上位4チームでは千葉のみ10試合消化。他3クラブは9試合消化)の3チームが追う展開となっている。
シーズン再開後、優勝争いを盛り上げていく存在として、大きな期待が懸かるのがレッズレディースだ。昨シーズン、6年ぶりのなでしこリーグ優勝を達成したレッズレディースにおいて、ドイツでも活躍したMF猶本光はオールラウンドな活躍を見せている。
中断期間に猶本は、なでしこジャパンの一員として女子アジアカップを戦った。3連覇を逃す結果にはなったが、代表初ゴールを挙げるなどの活躍を見せ、来年にオーストラリアとニュージーランドで共催される女子ワールドカップ(W杯)出場権の獲得に貢献。そんな猶本に、再開するWEリーグについて聞いた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部/全2回の2回目)
◇ ◇ ◇
――ここまで猶本選手の所属する浦和レッズレディースは、9試合を終えて3位という順位です。この順位、そしてチームのパフォーマンスには、どのような感想をお持ちですか。
「パフォーマンス以上に、結果にまったく満足していません。サッカーの世界なので、うまくいくことばかりではないのですが、リーグ戦で3連敗を喫してからはチームのパフォーマンスをも上がってきていますし、これから勝利を積み上げていきたいです」
――4連勝でシーズンをスタートして好調かと思われました。3連敗の時期は、何がうまくいかなかったのでしょうか。
「守備が崩れていましたし、早い段階での失点も多かったと思います。そこから自分たちで話し合い、修正して良くなったと思います。この中断期間では代表活動に参加した選手とクラブに残った選手がいますが、今はみんな集まって準備もできているので、より細かいところをみんなで合わせて、再開後につなげいきたいと思います」
――先日行われたアジアカップを見て、女子サッカーを見に行きたいと思う人も出てくると思います。そういう人たちに向けて、浦和がどんなサッカーをするのか、そのなかで猶本選手がどのような役割を担っているかを教えてください。
「WEリーグのなかで、レッズレディースはボールを握って攻撃ができるチームだと思います。それを支えているのは、うしろのGK、センターバックの強さではありますが、前線からアグレッシブにボールを奪いに行き、ボールを奪ってからもアイデアがあって、多くの選手が関わってゴールに向かっていくサッカーをしています。そのなかで私は、前線での役割が多くなると思うので、まずはしっかりと守備で貢献すること。ゴール前の最後の仕上げ、ゴールに直結するようなプレーの精度を上げたいです」
――今シーズン、猶本選手のゴールは1得点となっています。FWではないとはいえ、代表初ゴールも決めたことで、多くの人がクラブでもゴールを期待すると思います。この数字に関しては、どう捉えていますか。
「多くの方が、ゴールを期待してくれていると思うので、その期待に応えられるように努力していきたいです」
「そういう盛り上げ方をしても面白い」 なでしこ猶本光が提言するWEリーグ改革案
違うポジションで見えた新たな課題「クリアしていくことに楽しさを感じています」
――代表とは異なるポジションでプレーしていますが、1人の選手として、どのような意識で取り組み、成長していきたいと感じていますか?
「今までいろいろな経験をしてきて、だいたい、ボランチだったらどういうプレーをするか、前だったら何を意識するか、頭が整理できてきています。そのため、複数のポジションでプレーすることにナーバスになることはなくなりました。逆に引き出しが増えていくのが楽しい感覚でやっています」
――ボランチに強いこだわりがあるのかなと思っていました。
「ドイツでもトップ下をやっていましたが、その時はボランチの上がり目みたいな感じになっていました。というのも、私にシュートの技術がなかったんです。トップ下で出ていても、パサーになっていた部分がありました。2020年にレッズに帰ってきて、森(栄次)さんと一緒に仕事をするようになってからも、トップ下でプレーすることが多く『シュートができなければダメだ』と思い、シュート練習を増やしました。自分がずっとボランチをやっていた時には気づかなかったこと、特にゴールを決めることの難しさを肌で感じて、新しい問題が出てきたのですが、そうした違うポジションをやることで見えてくる新たな課題をクリアしていくことに楽しさを感じています」
――猶本選手と言えば、精度の高いキックが持ち味だと思っていたのですが、それでもやっぱりシュートは難しいのか、パスとシュートでは何か大きく違うのでしょうか。
「よく『シュートはゴールへのパス』と言いますが、GKの駆け引きがあったり、ボランチの時に対峙している相手がやってくる守備と、ゴール前で相手が体を張ってくる守備では、全然違います。『こういう時にGKはこういう風に動くから、ここにシュートしたほうが確率は上がる』というのは、本当に経験をしないと分からないものです。そういう発見が、すごく面白いです」
――新しいことにチャレンジしていくことが好きなんですね。
「そうですね。すごく前向きに捉えています」
――サイドハーフでプレーすることがありますが、どう考えていますか?
「サイドはサイドでまた違う景色になりますし、役割も異なります。ゴールへの関わり方も変わってくるので、それはそれで新鮮ですね。自分の引き出しを増やすという点では、本当に学びが多いです」
――見る人にとっては、猶本選手がどこで出場していて、どういう役割を担われているかを考えながら見るのも、1つ楽しみなポイントになりますね。
「今回、代表でも主にボランチで出場しましたが、サイドで出ることもありました。その時も自分のなかで、『どうしたらいいんだろう』というような迷いがなくて、そこで今まで取り組んできたこと、引き出しを増やしていたことも生きたと思っています」
「そういう盛り上げ方をしても面白い」 なでしこ猶本光が提言するWEリーグ改革案
クラブで求められるのはゴール前の仕事「ゴールにこだわっていきたい」
――女子サッカーが盛り上がるにはWEリーグが盛り上がることも大事ですが、代表の活躍も重要になります。お話を聞いていると、非常に多くのポジションをこなせることが、すごく大きな武器になっていていると感じるのですが、そこを強みにしていきたいという考えもあるのでしょうか。
「そこは結果論というか、目の前の与えられたポジション、与えられた役割のなかで、自分がどういうふうに成長できるかを考えてやってきた結果、そういう道があると思うので、もっと突き詰めていきたいです」
――具体的にはWEリーグでどんな活躍を見せて、突き詰めていきたいですか。
「やっぱり勝負を決めるのは、ゴール前の話です。中盤でのパス回しは大事なのですが、結局、点を取ることにつなげられなければ、勝つことはできません。私はサイドで出ても、トップ下で出ても、ゴールにつながるプレーにこだわっていきたいと思います」
――再開初戦はジェフ千葉レディースとの試合になります。この試合に向けてはいかがですか?
「ジェフはしっかり守って速い攻撃で得点を狙ってくるイメージがあります。相手のゴール前にすごくDFが多いので、そこをどう崩すかは自分たちが克服しないといけない課題です。そこにトライしていきたいですね。再開初戦は、チームを勢いづかせるためにも重要ですし、中断期間で試合を楽しみにしてくれていたサポーターの方々もいると思うので、『やっぱり楽しかった』と見てもらえるように準備をしたいと思います」
――タイトル獲得を目標に掲げていると思いますが、リーグ戦は首位の神戸との勝ち点差が「9」あるだけに、再開初戦から勝つことが重要ですね。
「そうですね。優勝するためには、神戸がどこかに負けないといけないので、他力になってしまうのですが、自分たちはそのチャンスをつかむために、毎試合勝利を重ねていくことしかありません。勝ちにこだわってやっていきたいと思います」
「そういう盛り上げ方をしても面白い」 なでしこ猶本光が提言するWEリーグ改革案
女子サッカー普及には「やっぱり日本代表が強くないと難しい」
――最後に、WEリーグ全体の話を聞かせてください。ドイツで、より成熟した女子リーグを見てきたかと思うのですが、今後、WEリーグはどのように成長したらいいと考えていますか。
「ヨーロッパは、地理的にも、いろいろな国の代表選手が集まりやすい環境なので、それもレベルの高いリーグが作れている要因かなと感じます。WEリーグが、同じように発展するのは難しいかもしれませんが、Jリーグのヴィッセル神戸で元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ選手がプレーしているように、引退した(カーリー・)ロイド選手とかに来てもらうような、そういう盛り上げ方をしても面白いのかなと思います」
――ヨーロッパでは、女子サッカーもより普及しているかなと思ったのですが、草の根に浸透させていくという点ではいかがでしょうか。
「私がすごく思うのは、リーグもすごく大事ですが、やっぱり日本代表が強くないと難しいということです。2011年に先輩たちが女子ワールドカップを優勝した時に、すごく環境が変わりましたし、『サッカーをやりたい』という女の子も、『サッカーをやらせたい』という親御さんも増えました。1回の優勝が与える影響力というのを、当時、私も目の当たりにして、肌で感じたので、自分たちにはそういう責任もあると思っています」
[プロフィール]
猶本光(なおもと・ひかる)/1994年3月3日生まれ、福岡県出身。小郡東野少年サッカークラブ-FC Lieto-女学院Paso Dorad-アンクラスFC Paso Dorad-福岡J・アンクラス-ANCLASサテライト-福岡J・アンクラス→浦和レディース-SCフライブルク(ドイツ)-浦和レディース。精度の高いキックや優れたボールキープ力に加え、パス、シュート、ドリブルなど多彩な武器を持つ。豊富な運動量でピッチを動き回り、決定的な仕事もこなす。
【Yogibo WEリーグ 2021-22シーズン】
<3月5日(土):第12節>
12:00キックオフ INAC神戸レオネッサ vs ちふれASエルフェン埼玉
13:00キックオフ マイナビ仙台レディース vs サンフレッチェ広島レジーナ
14:00キックオフ 三菱重工浦和レッズレディース vs ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
14:00キックオフ 日テレ・東京ヴェルディベレーザ vs AC長野パルセイロ・レディース
<3月6日(日):第12節>
13:00キックオフ 大宮アルディージャVENTUS vs ノジマステラ神奈川相模原
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