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衝撃デビューから1年 五輪めざす陸上界の「フワちゃん」の現在地
陸上女子長距離界のホープ、19歳の不破聖衣来(せいら)=拓大=が復活ロードを走り始めた。大学1年だった昨シーズン。駅伝を走れば区間賞、初めて出場した1万メートルのレースで日本歴代2位のタイムをたたき出し、一躍スターダムに駆け上がった。衝撃デビューから1年、故障を乗り越えて再び本格的なシーズンに向かう19歳には、2024年パリ五輪への道筋がはっきりと見えている。 【写真】1万メートル初挑戦で日本歴代2位の記録をマークし、ガッツポーズする不破聖衣来 ■いきなり日本歴代2位 不破が全国にその名を知らしめたのは、昨年10月の全日本大学女子駅伝(仙台市)だった。女王・名城大の5連覇に注目が集まっていたレースで、期待のルーキーとしてエース区間の5区(9・2キロ)を任され、異次元の走りをみせた。前を走る選手を次々とごぼう抜きにし、順位を9位から3位まで押し上げ、従来の区間記録を1分以上も更新する28分00秒をマーク。1万メートルに換算すれば、新谷仁美(積水化学)の日本記録30分20秒44にも匹敵する驚異的なタイムだった。 その走りはトラックでも証明された。昨年12月の関西実業団ディスタンストライアル(京都市)で1万メートルのレースに初めて出場。ここでも他を寄せ付けない圧巻の走りをみせ、いきなり日本歴代2位(当時)の30分45秒21をマーク。「最初の1000メートルで体が動いたので、(好記録を)狙えるんじゃないかと思って走った」と照れながら話す姿が印象的だった。 その後も出場した駅伝はすべて区間賞を獲得。今年7月の世界選手権(米オレゴン州)の1万メートルの代表最有力候補と呼ばれるまでになったが、今年に入ってから右アキレス腱(けん)痛が判明。股関節痛も重なって世界選手権の代表選考会となった5月の日本選手権1万メートル(東京)は断念せざるをえなかった。 ■復活への手応え 自分の走りや目標を見失いかけていた中、転機になったのが、世界選手権の1万メートルを現地で視察したことだった。アフリカ勢を中心にした中盤以降の競り合いやラストスパートの切れを目の当たりにし、五十嵐利治監督に「この人たちに勝つにはどうすればいいですか」と尋ねた。世界との差を痛感するのではなく、世界で戦う意欲が湧いてきた瞬間だった。 5カ月ぶりの実戦復帰となったのが、9月9日の日本学生対校選手権(京都市)の1万メートルだった。夏場に貧血にも悩まされていたため、出場を決めたのはレース3日前だったこともあり、五十嵐監督は「無事に1万メートルを走り切ることが目標だった」と話す。レース前半はプラン通り、1キロ3分20秒ペースの先頭集団の中で走ったが、残り2800メートル付近で自分の意思で一気にスパートし、2位以下を大きく引き離して32分55秒31でゴール。もともとタイムは度外視していたレースだったが、「出るからにはやっぱり勝負したいと思った。楽しかった」と振り返った。 ■日本記録に照準 9月25日の関東大学女子駅伝(千葉)は欠場し、沿道からチームメートに声援を送った。故障に悩まされた経験から、五十嵐監督もなるべく今シーズンは出場レースを絞っていく考えを示している。そして、12月の記録会で1万メートルの日本記録に挑戦する構えだ。不破も「世界で戦うために(日本記録は)狙っていきたい」と意欲的だ。 来年は再び世界選手権(ブダペスト)があり、代表入りできれば、不破にとって世界デビューの舞台となる。その先には2024年パリ五輪、28年ロサンゼルス五輪が待っている。女子長距離界で嘱望されていたホープとして、どんなステップを踏んでいくのか。まずは今シーズンの走りから目が離せない。(丸山和郎)
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